耐震診断
耐震診断とは旧耐震基準で設計された建築物について、現状における構造部材の状況や劣化損傷状況、
不同沈下などを調査し、耐震プログラムによって現行の耐震基準と比較し耐震性を判定することを目的としています。
また、新耐震基準で建てられた建物であっても劣化等の進行が懸念される場合には、
耐震診断をされる事をお勧め致します。この診断により、現在どの程度の耐震性が確保されており、
不足する場合にはどの程度耐震補強を行う必要があるのかを具体的に知ることが可能となります。
そしてこれを元に、改修する場合の工事費なども検討することが可能となり、
建物の維持存続か新築しするかどうかの判断材料にもなります。
耐震診断が必要となる
シチュエーション
- 行政からの指導があった。(公共性の高い建物、緊急輸送道路に面する建物)
- 自己所有の建物が相当古いが耐震的に大丈夫なのか。
- 増築したいが、今の建物の構造計算書を紛失している為、調べる必要が出てきた。
など
耐震診断の進行
耐震診断法 | 診断の特徴 | |
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発行団体 | 診断の基準書等 | |
(財) 日本建築 防災協会 |
既存鉄筋コンクリート造・ 鉄骨鉄筋コンクリート造 建築物の耐震診断基準 |
第1次診断法 建物重量と柱・壁の断面積等を 推定する簡略検討法 |
第2次診断法 柱・壁・コンクリート強度・鉄筋 量等から建物の強さと粘りを推定する方法 |
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第3次診断法 梁・柱・壁の強さと粘りから推定 する詳細な検討法 |
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既存鉄骨造建築物の耐震診断 および耐震改修指針 |
各部材の材料・幅厚比・横補剛間隔・ 仕口耐力・接合部耐力等から保有水 平耐力と靭性指標を算定する方法 |
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木造住宅の耐震精密診断 | 耐力壁の種類、配置、長さ等から 推察する検討方法 |
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伝統的構 法木造建 築物設計 マニュア ル編集委 員会 |
伝統的構法のための 木造耐震設計法 |
構造的特性を把握した上で、 限界耐力計算(近似地震応答計算) によって診断する方法 |
耐震診断には表の様に、その構造種別により診断や調査方法が異なります。
現地調査及び耐震診断の流れは、
鉄筋コンクリート造の場合下記の様になります。
- ①建設時の図面、確認申請書等を入手します。
- ②現地にて変更等の有無を調査します。
- ③耐震診断用供試体採取(強度、中性化試験用)位置の検討をします。
変更されていた場合、図面作成します。 - ④現地にて供試体採取位置を確定
※電磁波レーダー法により、鉄筋を切断しない様に探査します。 - ⑤供試体採取後は、無収縮モルタル、塗装等により現状復旧を行います。
- ⑥供試体の圧縮強度及び中性化について公的試験機関にて試験を行います。
- ⑦建物の不同沈下や劣化状況、利用用途、供試体の試験結果等をもとに構造計算を行い安全性の程度を
判定します。 - ⑧構造計算の結果をもとに、補強方法の概略案を検討します。
- ⑨以上の情報をまとめて診断結果報告書としてお客様へ提出し、ご説明致します。
※次の段階で建物の利用方法や導線計画を加味し具体的な耐震改修の為の検討に入ります。
上記以外にも、木造や鉄骨の場合、現地調査自体は変わるものの、概ねこのような形で
現時点での建物の構造を評価、診断し報告いたします。
耐震診断の為の現地調査
(鉄骨鉄筋コンクリート造や鉄筋コンクリート造の建物の場合)
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強度試験用供試体採取の為の
鉄筋位置探査建物各階より3~4箇所、コンクリート強度用供試体採取の為、鉄筋の無い部分を探査し、ケガキます。
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供試体の中性化試験
公的試験機関にて圧縮強度を見ると同時にコンクリートの中性化試験も行います。これによりコンクリート躯体の中性化深度を見ます。
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供試体の採取
ケガいた鉄筋部分を避けながら、コンクリート強度試験用の供試体(コア)を採取します。
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建物の劣化調査
建物の亀裂や、劣化により白華などの範囲や位置を記録し、耐震診断における劣化係数として診断材料にまとめます。
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供試体圧縮強度試験状況
公的試験機関にて、コンクリート圧縮強度試験を行い、結果を報告書として受け取ります。
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建物の不同沈下測定
地盤の状況によっては、建物が不同沈下を起こしている場合があり、建物に掛かっている負担などを傾斜角として記録していきます。
耐震診断の為の現地調査(鉄骨造の建物の場合)
劣化、損傷調査、不同沈下調査は、鉄筋コンクリート造の場合と同様に調査致します。
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鉄骨の溶接部分の超音波探傷試験
溶接した部分にひびや空隙がないか超音波で探査し、溶接部分の健全性を評価します。
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ボルトの径と規格の確認
鉄骨部材を接合しているボルトナットの径と規格(F10T等)を確認します。
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供鉄骨部材の外形寸法と
図面寸法の整合図面通りの部材で納められているか確認します。
設計図書が無い場合は、すべての寸法を調査記録します。 -
ガセットプレートの形状確認等
形状を測定し、軸組詳細図等に反映します。
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鉄骨部材の厚みを探査
ボックス形状の柱(コラム柱)などは、部材の厚みの確認ができない為、超音波厚さ計で確認します。
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プレース材の径測定
ブレース材の径を測定します。
耐震診断の為の現地調査(木造住宅の場合)
一次診断においては、外観や進入できる範囲からの目視や計測調査となり、
さらに詳細調査が必要な結果となった場合には、天井や床の一部を撤去し、現況を調査して診断材料としていきます。
その他、劣化損傷調査や不同沈下は、他の構造同様に行います。
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筋交い及び金物の確認
押入などの天井から天井裏へ進入し、筋交いや金物の設置状況を確認します。
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柱の傾斜状況の確認
主要な柱について、傾斜角測定を行い、建物全体の傾きの傾向を確認します。
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床下の劣化状況
特に水回り付近は写真のように虫害による脱落等がみられます。
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外壁の亀裂の測定
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床の不陸測定
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屋根の劣化状況確認
耐震診断の為の現地調査(伝統木造建築等)
古い建物の為、現況調査による図面作成から始めます。
調査した資料や図面を「伝統的構法のための木造耐震設計法」に基づき耐震診断を行っていきます。
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3Dスキャナーにより、
建物の構造フレームをデータ化各室、天井裏、小屋裏に3Dスキャナーを設置し、3dデータを取得していきます。これにより建物の躯体形状を図面化(平面図、断面図、矩計図等詳細図等)していきます。
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3dスキャナーでは判別できない仕口や継手の状況を確認します。
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3Dスキャナーのデータを結合し、躯体を点群データにします。
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躯体データを元に2次元データ
としてCAD図面化調査した資料や図面を「伝統的構法のための木造耐震設計法」に基づき耐震診断を行っていきます。
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3Dデータから2次元データへ
矩計図の作成